「あ……え、と、」

「うん!」

「今日は、よろしくお願いします……」

「うん! よろしくね~っ!」

「うわぁっ!?」


 わたしの部屋で正座をしてダラダラと汗をかいている一悟くんに、正面から抱き付きに行った。


 勢い余って押し倒してしまう。


「んふふっ、すご~くドキドキしてるねぇ……♡」


 一悟くんの胸に頬を擦り寄せてみたら、力強い鼓動が伝わってくる。


「っ……そんなの、羽入さんだって……」

「ふふ、触って確かめてみる?」

「……ば、ばか」


 あっ……それ好き。


 可愛く『ばか』って言われちゃったら、わたしの中の庇護欲が暴れだしちゃうよ。


 今日は、お泊まり日和。


 ついでに夏祭りでもあるけど、今頃距離感のあるデートをしている二人と鉢合わせないように行かないことを決めた。


 その代わり、二人っきりでじっくりと一悟くんを堪能できる時間になった。


 押し倒されたままの一悟くんは赤い顔でわたしを見上げている。


「は、羽入さん……そろそろ退いてほしい」

「わたしはもうちょっとこうしてたいなぁ?」

「……やだ」

「え~なんで?」

「……俺にも押し倒させてよ」


 わ。ふふ、これは一本取られちゃったね。


 わたしも一悟くんからグイグイ来られるのは、まんざらでもないことだった。


 ゆっくりと体を起こしたとき、一悟くんも追うように上体を近付けてきて。


 ポスンと耳をわたしの胸へ収めた。


「ん……羽入さんもドキドキしてるね」


 そのまま腰に手を回してぎゅっと抱き付いてくる。