「ほ、ほら。羽入さん、おしまい!」


 ぐいーっと肩を掴んで剥がそうとしてくる一悟くんに、わたしは必死でしがみつく。


「やだ~……まだ足りないよ~……」

「っ、俺だってそうだけど、テスト前でしょ」

「一日くらい変わらないよぉ……」


 駄々をこねて一悟くんから離れずにいたら、耳元に唇が近付いてきた。


 温かい吐息が掠めて、体がピクリと震える。



「……テストが終わったら、いくらでもしていいから」



 なんという爆弾発言。


 わたしの目は爛々と輝きを放つ。


「ほんとっ? 一悟くんの一日、わたしにくれる?」

「……う、うん」

「朝から晩まで、ずっと一緒だよ?」

「わ、わかったから」

「……シャワーも、一緒に?」

「ぁえっ、いやそれはっ」

「ふふっ、冗談だよ~」


 笑顔でパッと体を離す。


 膝から降りようとしたら、真っ赤で不服そうな一悟くんがお腹に手を回して引き留めてきた。


「……いいよ。一緒に、入ろ」

「えっ!」


 なんだか今日の一悟くん、サービスが豊富だ。


 あ、え、そっか、一緒に入ってくれるんだ……。


 冗談が現実になっちゃったからか、わたしまで動揺してきちゃった。


 ――どうしよう、楽しみすぎるねぇ~……!


「……ふへへ」


 一悟くんには聞かれたくなかった気持ち悪い笑みまでこぼれてしまう。


「んふっ、じゃあ、勉強する~……っんふふ」


 わぁ~だめだ、ゆるゆるの口元が隠せないよ。


 テスト中に思い出し笑いしないように、気を引き締めないと~っ……!