「みんな、もっと端によって話したら?」


 ゆっちたちが道をふさいでいたことで、後ろにいた蓮見くんたちが廊下を通れなくなっていたらしい。

 白田さんの話題が出たの、どう思ってるんだろう。

 なんだか嫌な予感がして恐る恐る振り返ってみても、蓮見くんはニコッと笑うだけだった。


「あっ、叶芽! それに宇賀時くんも」

「いやオレもいんだけど!?」

 蓮見くんと宇賀時くんに気がついたゆっちたちは、少し恥ずかしそうに落ち着きを取り戻しはじめた。

 学校一のモテ男と言われるだけあって、誰とでもフレンドリーに接している蓮見くんは、ゆっちたちみたいに派手な女子グループから呼び捨てで呼ばれてる。

 ……私は絶対に呼ばないけど。


「つーか今の話マジ! 桜葉が……誰と付き合ってるって?」

 ノリノリでゆっちたちに聞いたのはコータくんだった。

 地味子、としか言っていなかったので、コータくんは誰のことなのかまだわかっていないみたいである。


「それは――」
「そこ、少しどいてくれないか」

 ここにいる誰の声でもない言葉が後ろから聞こえた途端、私は内心「タイミング……!」とまた頭を抱えたくなった。


「ん、杏子?」

「景……おはよう」

「おはよう」


 私がいることに気づいた景は、少し笑みを浮かべて挨拶をする。


「お、おはよう……ございます」


 そして、景の隣にいたその子――白田さんが、遠慮がちに頭をさげた。