「春佳」



挙動不審の私を見ながら口を開いたのは眞尋くん。



「伊織と付き合ったのか?」

「……おう」

「良かったな。幸せにしてやれよ」



……眞尋くん。

ありがとう。



「そうだよ! 乃亜をちゃんと幸せにしてよね!」

「もちろん」



莉緒ちゃんの言葉に力強く頷く春佳くん。

私はまた泣きそうになった。

だけど、その涙を止めたのは眞尋くんだった。



「じゃあ、全校集会の内容を聞かせてやれよな」

「ええっ!」



そういう眞尋くんは最後まで意地悪だった。


だけど、優しさもあって。

眞尋くんは莉緒ちゃんを連れて病室を出て行こうとする。



「乃亜ーっ。ちゃんと気を利かせたんだから、伊吹くんに伝えるんだよ!」



……莉緒ちゃんまで。

春佳くんは首を傾げているし……。


しかも、気を利かせたってことは……。

もしかして、一緒のタイミングでお見舞いにいこうとしなかったのって、そういうこと?

2人は春佳くんが目を覚ましていることを知っていたってこと?

それで、私が春佳くんに想いを届ける時間を作ってくれたってこと?


……ありがとう。

眞尋くんと莉緒ちゃんに感謝を伝えようと思ったときには、すでに2人は病室を出て行っていた。