他の誰かのあなた

「話してしまった以上、君が嫌だと言うのなら、離婚するよ。
もう一度言う。僕には愛する家族がいる。
結婚後も、君に隠れて会っていた。
でも、バレないようにはしていたよ。
そうじゃない?
君は僕に疑惑を感じたことなんてなかったんじゃないかな?」

確かにその通りだ。
彼がまさか他の女性のところに行ってたなんて、夢にも思わなかった。



「つまり、君は見せかけの妻に過ぎない。
でも、感謝はしてるから、大切にはするよ。
今までだって、そうしてきたつもりだけど。」

確かにその通りだ。
柴田は私を大切にしてくれた。
ただ、それは愛情からではなかった。



私は柴田を愛していると思っていた。
そして、当然、柴田も私を愛している、と。
だから、確かにショックではあったけど…



「私には恋愛感情以外の愛情はないの?」

「それならあると思うよ。
君とは色んな意味で相性も良いと思うし、だからこそ、今までうまくやれたんだと思うよ。」

そう言ってもらえたことで安心した。
たとえ、ぬいぐるみに対するような気持ちだとしても、可愛いとか大切だとか好きだとか思ってもらえてるなら、それで良い。
何故だか、そんな風に思えた。



(あぁ、そうか……)

私は不意に思い出した。
柴田と初めて会った日のことを。
見た目は雅人みたいにかっこよくはないけれど、なぜか妙に彼に惹かれたのだ。



あなたは、すでに他の誰かのものだったから。
だから、私は本能的に惹かれてしまったんだ。