他の誰かのあなた

「なんて顔してるんだい。そんなにびっくりした?」

「えっと…意味が…私…」

「彼女は中学生の時のクラスメイトでね。
付き合い始めたのは、確か中2の夏だったかな。
やがて、中3の時に彼女は子供を身篭ったんだ。
僕は結婚するつもりだったんだけど、うちの両親がそんなことを許すわけがなかった。
僕らはまだ中学生で、しかも、彼女の親はシングルマザーで水商売をしていたからね。」

彼は淀みなく話した。
まるで、映画のあらすじでも話すように淡々と。



「彼女は子供を堕ろすことを拒んだ。
もちろん僕も。
そしたら、両親は、僕達が別れるなら、子供を産んでも良いと言った。
だから、仕方なくその話に従った。
両親は、まとまった金と土地を彼女に渡し、僕は中学を転校した。」

何となく…少しずつ…柴田の話してることがわかってきたような気がした。



「もちろん、僕達は親に隠れて会っていた。
親には絶対にわからないようにね。
そのために、家では従順なふりをして、何でも親の言うことを聞いた。
そして、高校、大学、社会人と進み、やがて結婚の話が出た。
はっきり言って、相手なんて誰でも良かったんだ。
僕には、愛する家族がすでにいたからね。」

そう言って微笑む柴田に、背筋がぞくぞくした。