他の誰かのあなた

「どうもありがとうございました。」

「どうぞお大事に。」

医師達が部屋を出て行き、柴田がベッド脇の椅子に腰を降ろした。



「本当に良かったよ、君、二日も意識が戻らなかったんだよ。」

柴田はいつもと変わらない。
何故だろう?
もう私が刺された事情は聞いてるはずなのに。
でも、聞いていたら、柴田がこんな顔をしているはずが無い。



「あ、あの……晴美は……」

直接的なことを聞くのが怖くて、私は晴美のことを訊ねた。



「今は警察病院にいるはずだよ。」

「えっ!?」

「君を刺した後、自ら死のうとしたみたいだ。ああ、傷はごく浅いらしいから心配はいらないよ。」

晴美が自殺未遂を…!?
ショックな話だった。
でも、無事だと聞いて、ホッとした。



「あぁ、それからね、お腹の子供は無事だったよ。本当に良かったね。」

「こ、子供!?」

酷く驚いたけれど、でも、思い当たる節は確かにあった。
長い間出来なかったのに、まさか、こんなタイミングで妊娠していたなんて…



(そうか……)



それを聞いて、私は得心した。
柴田は、私に子供が出来たから、不倫のことは水に流してやり直そうと思ったんだ、と。