他の誰かのあなた





「大変だったね。とにかくお風呂に入ったら?
タバコのにおいが酷いよ。」

「そうするわ。」



脱衣室で、私はホッと胸を撫で下ろした。
今日は、英会話の帰りに友達に会ったと、柴田には嘘を吐いた。
誰にしようか迷ったけれど、何も実在の人物でなくても構わないんだと気が付いた。
柴田は私の友達をそんなに知らないのだから。



今日は美香という友人にした。
大学時代の友達で、趣味がパチンコだという女性だ。
美香に連れられ、私は初めてのパチンコ屋に行ったと話した。
証拠というわけではないけれど、パチンコ屋でもらってきたお菓子も渡した。
実際に、もらってきたものだ。
5000円注ぎ込んだにしては、割に合わないつまらないお菓子だが、もちろん、柴田は文句なんか言わない。



熱いシャワーを浴びていたら、雅人のことがふと頭を過ぎり、思わず笑みがこぼれた。
雅人はもう帰っただろうか?
晴美は、それ程勘の鋭い女じゃないから、何も知らずに彼を出迎えたことだろう。



(まだ結婚したばかりだっていうのに、悪い男よね…)



声を出して笑ってしまいそうになり、焦って堪えた。
本当に愉快だ。