他の誰かのあなた





それから数日後、私はまた雅人を待ち伏せにあの場所へ向かった。
次の日直ぐに行かなかったのは、まだ心の整理がついてなかったせいだ。



何日か考える時間があったことで、私はすっきりとした気分で、雅人の元へ行くことが出来た。
私は雅人の会社の傍で彼を待った。
今日は、物陰に隠れるようなこともなく…



(雅人…!)



彼は同僚らしき男性と一緒だった。
だが、私に気付くと、雅人はその男性に何事かを囁き、男性は手を振って去って行った。
雅人は、微笑みながら、真っ直ぐ私の方へ歩いて来た。



「……お待たせ。」

「それ程待ってないわ。」

「そう、それなら良かった。
あれ?今日は、パン屋さんには行かなかったの?」

「……今日は良いの。」

「じゃあ、僕に会いに来てくれたんだ。」

「……まさか。」

私達は顔を見合わせて微笑んだ。



もしかしたら雅人は知っていたのかもしれない。
あの日は偶然なんかじゃなかったってことを。
ふと、そんなことを思った。



「フレンチと和食、どっちが好き?」

「あなたの好きな方で構わないわ。」

「そう…じゃあ、こっちだ。」

雅人は、歩き始めた。
私は少し離れて後ろを歩いて行く。
このあたりなら、まだ同僚に会うこともあるかもしれない。
変な噂でも立ったらまずい。