他の誰かのあなた

少しはムッとしたけれど、後は楽しく話せた。
趣味の話、ニュースの話…雅人は意外とおしゃべりだ。
いろんなことを話してくれた。
それに、コーヒーやケーキも本当に美味しくて、いつの間にか私の機嫌は直っていた。



「今日はありがとうございました。
どうも鍵を落としたみたいで…
柴田が帰って来るまで時間を潰したかったんです。」

もちろん、そんなことは嘘だ。



「たまたまお会い出来て、良かったです。
そのおかげで、楽しい時間が過ごせました。」

雅人は私の嘘を簡単に信じたようだ。
それに、お世辞なのか何なのか、よく分からなかったけど、とりあえず嫌われていないことは確信出来て、気分が良かった。



だけど、この先に進むのはどうだろう?
まだ私には決心が付きかねていた。



すぐにでも先に進みたい。
でも、リスクを考えないといけない。
今日はここまでだ。



雅人は何も言わず、微笑んでいる。



(もう少し、待ってね。必ず、私のものにするから…)



雅人は、お勘定を払ってくれただけではなく、駅まで送ってくれた。



「今日は本当にどうもありがとうございました。」

「こちらこそ。次は食事に行きましょう。」

「え?」

驚く私に手を振って、彼はその場を立ち去った。