他の誰かのあなた

それからしばらくは、おとなしくしていた。
あえて、というわけではなく、前向きになれなかったから。
言い寄ってくる男はいたけれど、やっぱり興味は持てなかった。
だから、あっさり断ったり、数回付き合って自然消滅したりしていた。



時が流れるに連れ、私は自分の馬鹿さ加減に嫌気がさしていた。
達也の件は、本当に失敗だった。
彼を手に入れられなかっただけではなく、大きな代償を支払ってしまったのだから。



布川のことが忘れられないというわけではなかった。
ただ、自分の見る目のなさに落胆したのだ。
そもそも、私はもっと布川にも周りにも気を配るべきだった。
いい加減にしていたからこそ、あんな失敗をしてしまったのだ。



それに、よくよく考えると、達也には良いように利用されてしまったような気がする。
つまり、達也は私を軽く見ていたのだ。
そう思うと、妙に腹が立った。
なのに、たまに、キャンパスで達也を見かけると、自然に姿を隠してしまう。
そんな自分が情けなかった。



このままでは、私は一生達也のことが忘れられないかもしれない。
とても悔しかった。



(だけど……)



元はと言えば、私が悪いのだ。
私の悪い癖のせいなのだから、自業自得だ。



そんなことを考えているうちに、私は大学を卒業して、達也をみかけることもなくなり、少しずつ、心の平穏を取り戻していった。