他の誰かのあなた

知佳には隠れて、私は達也と付き合った。
達也と会うのは、いつもラブホテル。
つまり、体の付き合いだけだった。
都合良くあしらわれてるだけじゃないかとも思ったけれど、彼は優しかった。
そして、毎回のように言うのだ。



「どんどん由希を好きになっていく…」



そんな風に言われると、もしかしたら、彼は知佳と別れてくれるんじゃないかと思い、期待してしまう。



衝動的に、知佳にはっきり言ってやろうかと思ったこともあったけれど、やはりトラブルは起こしたくなかった。
女というものは感情的で、しつこくて恨みがましい。
今まで何度かトラブルを経験していたし、その時は本当に鬱陶しい日々を過ごしたから、あんな想いはもうしたくなかった。



それに、私には布川という者もいた。
達也のことで頭がいっぱいにはなっていたけれど、布川のことが嫌いになったわけではなかった。
布川と私の関係はそれなりにうまくいっていた。



確かに達也のことの方が大きかったけど、それは一時的なこと。
達也が知佳と別れてくれたら、それできっと私の気持ちは冷めると思っていた。
布川は良い人だから、揉めたくはなかった。



(きっと、うまくいく…)