他の誰かのあなた

私がその男子と付き合うようになったことは、瞬く間にクラス中に広がった。
男子が話したこともあり、束の間付き合った女子に別れを告げたからでもあった。



「安藤さん、酷いじゃない!」

私は例の女子から、文句を付けられた。



「酷いって、何が?」

惚けたわけではなく、本当にわからなかったのだ。



「何がじゃないわよ。三浦君を奪っといてとぼけるつもり!?」



言われてみれば、確かにそうかもしれない。
私は三浦をこの人から奪ったんだ。
三浦なんて、好きでもなんでもないのに。
そう思ったら、なんとも愉快で、笑いが込み上げて来て、我慢出来なくなった。



「ふふふ…はははは…」

「な、なに、笑ってるのよ!」

憤る女子の前で、私は笑い続けた。



結局、三浦とは何度かデートをしただけで終わった。
やはり、最初の印象通り、これといって魅力のない男だった。
会っていても、全然楽しくない。
とても不思議だった。
誰かのものだと思ったら、妙に輝いて見えるのに、自分のものになったら、すぐに色褪せてしまう。



それが、私の悪い癖だと自覚したのは、もうしばらく経ってからのことだった。