「助けてくれて、ありがとうございます」
「いやいや、むしろ迷惑かけてごめんね。練習のこと、言わないでおいてくれて助かったよ」
「……言わないほうが、いいんですか?」
あえて黙っていたというよりは、わたしは、どう答えればいいか迷っていただけだった。
先生の意外な言葉に、目を瞬かせる。
「三澄って、女の子からの人気、すごいだろ。練習のことが出回ったら、モデルを志願する女の子が次々とでてきちゃうかもしれないからさ 」
「……」
美術室前の廊下に、モデル志願の女の子が順番予約のために列をつくる光景が、ありありと目に浮かんだ。
「なんか、想像できちゃいました……」
乾いた笑いこぼせば、先生が「だろ?」と肩を竦める。
「部活中なのに美術室まで呼び出しにくる子、結構いるんだよね」


