咄嗟に、誤魔化してくれているのだと理解して、
「……い、いえ。サッカー部のほうは練習試合があったばっかりなので、大丈夫です」
わたしも先生に、上手な作り笑顔を返した。
「っ」
女の子がキュ、と唇を噛み、わたしに背を向けた。
タタタ、と乱れた足音を立てて、遠ざかっていく。
……やがて、嵐が過ぎ去ったかのような静寂が訪れて。
残されたわたしと先生は、ふう、と同時に肩を下ろした。
……びっくりした……。
三澄くんと関わることで、不特定多数の女の子から快く思われないのだろうということは、頭ではわかっていたけれど。
まさか、直接詰め寄られるなんて。
動揺している心臓を無理やり押さえ込み、わたしは、隣の先生を見上げた。
「……準備室、片付けるんですか?」
「まさか。生半可な気持ちで取りかかれるような部屋じゃないよ」
「……確かに……」
倉庫のような室内を頭に浮かべ、ふふっと笑う。
片付けを始めたら、終わるまでにだいぶ時間がかかってしまいそうだ。


