「三澄くんなんでしょ」


いつまでも黙ったままのわたしに、女の子はイラついたように眉を寄せた。

ぴしゃりと言い切られ、わたしは、視線を揺らす。


「……付き合ってるなら、はっきりそう言ってよ。ヘンに期待持たせるような返事しておいて、隠れてこそこそするようなこと——」

「あーいたいた、上村さん」


否定する間も与えない勢いで、わたしに言葉をぶつける女の子。

思わず圧倒されていると、女の子の声を遮るように、聞き覚えのある声が降ってきた。


「今日もきてもらっちゃって、悪いね」


声の方向へと顔を上げれば、美術部顧問の先生が、2階からひょこりと顔を出し、わたしを見下ろしていた。


先生は急ぎ足で下りてきて、困ったような笑みを浮かべる。

いやあ、と頭を掻きながら、


「準備室の片付けくらい、部員で済ませるべきなんだけど……大事なコンクールが控えてて、みんな作業で手一杯でさ。人手が足りてるからって上村さんを貸してくれてる向井先生には、感謝しないとなあ」


まるで状況説明をするように、言葉を並べた。

女の子の視線が、わたしと先生の間でいったりきたりを繰り返す。