「——好きな人って、誰?」
「……」
はじめから核心を突かれてしまい、心が大きく震えた。
わたしは思わず、眉を下げる。
「好き“だった”人、だよ」
「あんま変わらなくない?」
「大きく変わってるよ」
ため息交じりに訂正すると、三澄くんは難しい顔をする。
そういえば……。
『恋愛とかよくわからない』んだっけ。
わたしは噂で聞いたことのある、三澄くんの、お決まりの告白の返答を思い出した。
「同じ、サッカー部の人。……でも、もう好きなのやめるから。過去形なの」
「ふーん」
聞いておいて、返ってきたのは、大して興味のなさそうな声色。
けれどキャンバスの近くに置いてあるスツールに腰を下ろした三澄くんは、わたしをじっと見つめて、
「具体的に、どうすんの」
さらに問いかけてきた。


