こころが揺れるの、とめられない



「大賞を勝ち取れる絵ってさ、つまり、誰かの心を動かせなきゃいけないってことだろ」


いつだったか、朝、美術室前の廊下で。

ポスターをじっと眺める三澄くんの横顔が、思い出された。


「だから、感情の乗ってない俺の絵は、それに及ばないんだよね」

「……そ、……」


そんなこと、ないよ。
——そう言いたかった。


上手だなって、綺麗だなって、思ったよ。って。

……だけど。


わたしは思わず、呑み込んだ。


三澄くんはきっと、そんな言葉が欲しわけじゃないだろうな、と感じたから。


伏せられた静かな瞳の奥で、なにか熱いものが揺らめいているのが、見えた気がした。