こころが揺れるの、とめられない



わたしの質問から目をそらすように、ぎこちなく視線を伏せた三澄くんは、机の上に置かれた油絵の具セットに手を伸ばした。

その様子に、さっそく後悔してしまう。


一度、はぐらかされた質問だから。

……もしかしたら、しつこかったかもしれない。

踏み込みすぎちゃったかな。


こっそり反省していると、ツン、と画溶液の独特の匂いが、あたりに広がった。

それを追いかけるように、


「……人を、描いてみろって言われたから」


三澄くんの声が、室内に静かに響いた。

落ちかけていた気持ちをすくい上げられ、顔を上げる。

けれど、三澄くんの視線とは、交わらない。


「俺、昔から感情を表に出すのが、苦手で。それを筆に乗せるのも、苦手なんだよ」


――なにを考えているのかわからない。


わたしが三澄くんに、ずっと感じていること。


ポーカーフェイス、っていうのかな。

派手に表情を崩すところなんかを、まだ見たことがなくて。

わたしがこんなに三澄くんのことを知りたいと思うのも、半分、そのせいだ。


現に今も、もしかしたら答えづらい質問だったかもしれないのに、三澄くんは普段の冷静さを保っている。