「……そういうことにしといてあげる。で、なにがあったの?」
「それは……」
美術準備室でのことを再び思い出し、恥ずかしくて狼狽えると、さやちんがますます目を細めた。
ぽわっと、わたしの頬が熱を持つ。
「……どうしてそこで、赤くなるのかねえ?」
ぐいぐいと詰め寄られてしまい、縮こまるわたしの体。
……だめだ。
あの状況を思い出すと、どうしても照れくさくなっちゃうよ。
わたしは降参の意を込めて、困ったように両手を小さく上げた。
近くに誰もいないことを確かめてから、
「あ、あのね——」
声を潜めて、三澄くんとの間に起きたことを説明する。
屋上でのことを黙っていてもらう代わりに、絵の練習に協力することになったこと。
先週、綾人と可奈ちゃんの前でいつも通りに振る舞えなかったこと。
三澄くんの前で涙を我慢できず、慰めてもらってしまったこと。
その一連の流れを聞いたさやちんは、徐々に、ニンマリと笑顔を浮かべていった。


