こころが揺れるの、とめられない



***


「練習の件って、なんのこと?」


先生と別れ、教室に向かう途中で、さやちんがジトリとした目を向けてきた。


「先週の、“ちょっとした頼まれごと”のこと?」

「……。そうです……」


今度は誤魔化しきれないと観念して、わたしはこくりと頷く。

さやちんは不満げに眉を寄せ、腕を前に組んだ。


「やっぱりね。絶対、なにか隠してると思った」

「ご、ごめんて、さやちん。……その内、話そうとは思ってたんだよ?」


疑いの目を向けられて、わたしは「ほんとだってば」と言い張った。


さやちんは、大切な親友だもん。

今までも綾人のことでたくさん相談に乗ってもらって、すごく感謝してるんだから。

ただ、なんだか成り行きでどんどん話が展開してしまっていたし、三澄くんとのことはあまり大声で話せる内容じゃないし……。


「話すタイミングを、見失っちゃってただけ」


わたしの言い訳に、さやちんはあまり納得がいかない様子のまま、ため息をついた。