「お待たせ」 書道室から出てきたさやちんにハッとして、顔を上げる。 「……なんか顔赤いけど、大丈夫?」 「えっ……ほんと? 暑いからかな?」 咄嗟に、襟元をパタパタさせ、とぼけてみせた。 「わかる。天気はいつまで夏気分なの、って感じー」 「だよねえ」 同意をもらえて、内心ホッと息をつく。 どうやら上手に誤魔化せたみたいだ。 頭の中を切り替えて、さやちんと並んで歩き出したところで、 「お、上村さん」 すぐ近くの職員室から出てきた先生に声をかけられて、反射的に足を止めた。