「へーき?」 突然降ってきた声に、思考が止まる。 半ば反射的に、ぐしゃぐしゃであろう顔を上げた。 ぼやけた視界が捉えたのは、塔屋の上からわたしを見下ろす、男の子。 「ハンカチ、使う?」 綺麗に折りたたまれた四角い布を取り出して、ひらひら、と振ってみせて。 気遣わしげに首を傾けたその人物に、わたしは何度か瞬いた。 だんだんと、視界がはっきりしていって——。