「場合によっては、誰かに聞かれると困るかと思って」 ……場合に、よっては……? かなり引っかかる言い回しだ。 いよいよ本当に、下僕になる心の準備をしないといけないのかもしれない。 両手を胸の前で握りしめ、わたしは身構えた。 「いきなり連れてきて、驚いたと思うんだけど」 「は、はい」 緊張気味に返事をすると、三澄くんが、少しだけ目尻を下げた。 「……なんで、いきなり敬語?」 ……あ。 ……ちょっとだけ、笑った……。 はじめて見る三澄くんの表情に、思わず見惚れてしまう。