「三澄くん!」
せっかく整えた髪が風で乱れるのも気にせずに、わたしは、屋上に足を踏み入れる。
大好きなその姿を見つけて、駆け寄った。
「……そんなに急いで、どしたの」
柵に背中を預けて腰を下ろしていた三澄くんは、困惑したようにわたしを見上げた。
「三澄くん、おめでとう」
「……え」
「大賞、おめでとう」
「……」
しばらく固まっていた三澄くんは、少しの間を置いて、
「……春野先生か」
なにやら腑に落ちたように、小さく息をこぼした。
「たった今、聞いて、いてもたってもいられなくって……」
三澄くんの隣に座り、その黒い瞳をじっと見つめて、わたしはもう一度口を開く。


