——よかった。
立場的には、……わたしとあの子は、同じ人を好きになった、ライバルみたいなものなのかもしれないけれど。
……三澄くんのことを好きな気持ち、いい思い出で終わらせられたようで、よかった。
ひとりしみじみとそう感じて、危うく伝染してしまいそうだった涙を、瞬きで引っ込める。
でも……。
三澄くんが女の子から呼び出されるのは、今月に入ってから、……これで2回目。
……付き合ってるからって、……ちっとも、油断できない。
ちょっぴりライバルが多すぎじゃないかな。
……三澄くんにうっかり心変わりされてしまわないように、これからも努力を惜しまないようにしないと……。
わたしは、そう心の中で気合いを入れ直すと。
スマホの暗い画面を顔の前にかざして、鏡代わりに、身だしなみをチェックする。
リップを塗り直し、前髪を整えていると、——ヴヴ、とスマホが震えた。
〈屋上にいる〉
画面に現れた文字を見て、
〈そっち行く!〉
わたしはメッセージを返してから、そのまま階段を上っていった。


