「三澄くんに……好きになってくれてありがとう、って言ってもらえたの……。それだけで、じゅうぶんだった……」
昇降口の段差に座り込む女の子の後ろ姿に、わたしは、咄嗟に息を潜めた。
しばらく、あたりに鼻を啜る音だけが続いて。
……それは徐々に、寄り添っていた彼女の友達にまで連鎖していったようだった。
……あの子が……。
きっと、三澄くんを呼び出した子だ。
ここにいるってことは、……話は、もう終わったんだ。
……三澄くん、どこにいるんだろう。
あたりをキョロキョロ見回したけれど、それらしき人影は見つからなかった。
もしかしたら、あの子に気を遣って、時間を置いてから戻ってくるつもりなのかもしれない。
わたしは再び、歩を進めた。
女の子たちが身を寄せ合って肩を震わせている後ろを、足音を立てないように、そっと通り過ぎる。
階段の下までやってきて、わたしは後ろを振り返り、体から力を抜いた。


