「あ——わたし、ちょっと、三澄くんのところに行ってきますっ」
「行ってらっしゃあい」
ふつふつと湧き上がる本能的な喜びに耐えられず、わたしは立ち上がった。
なにも考えず廊下へ飛び出してから、……三澄くんの居場所を知らないことに、気がついて。
〈どこにいる?〉
廊下を歩きながら、落ち着かない気持ちでメッセージを送った。
目的地が定まらないまま、渡り廊下を進み、うろうろ足を動かしていると、
「大丈夫?」
「よしよし、よく頑張ったよ」
昇降口のほうから、数人の女の子の声が聞こえてきた。
「……ふたりとも、応援してくれてありがとう……」
「フラれるってわかってても勇気を出したあんたはいい女だよ。自信持って」
「うん……っ」
絞り出すような弱々しい声が、静かな廊下に響く。


