生徒玄関とは反対の、正面玄関へと繋がる北側の廊下は、相変わらず人通りが少ない。

渡り廊下から吹き込んでくる、からりとした冷たい風に肌を撫でられ、わたしは身をすくめた。

逃げるように、美術室の扉を開く。

ガラガラ、という音を立てた扉に、窓際の水道で筆を洗っていた祐希(ゆうき)ちゃんが、こちらを振り返った。


「あ、みくるちゃん。お疲れさま」

「お疲れさまあ。うー……寒い」

「もうすっかり冬みたいだよね。外だと、大変だねえ」

「動いてるときは気にならないんだけどね……」


つい先ほどまでジャージだけで過ごせていたのが、嘘みたい。

部活を終えて、制服に着替えた途端、寒さをより感じるのはなんでだろう。

着ている枚数は、増えてるはずなのにな。


そんなたわいもない言葉を交わしながら、室内をくるりと視線だけで確認して、わたしは首を傾げた。


「あれ……、三澄くんは?」

「……」