「上村さんが笑ってくれれば、それでよかった」


その想いで、筆を動かしていたつもりだったのに。


「だけど、……できれば、その視線の先にいるのは、俺がいい」


一緒にいる時間が増えれば増えるほど、どんどん欲張りになっていったんだ。


恋愛はどうやら、いいことばかりじゃないらしいけれど。

上村さんにとっての、痛いことも、苦しいことも。

俺からしたら、ぜんぶ——


「もう恋愛なんてしない、なんて、そんなこと言うくらいなら……」


ぜんぶひっくるめて、


「その分の気持ちまとめて、……俺にちょうだい、上村さん」




きらきらしていて、羨ましくてしょうがないんだ。





「……三澄、くん……」

「好きだよ」


腕の中で、息を呑んだ上村さんが、小さく身じろいだ。

こちらを伺うように顔を上げた上村さんの、焦茶色の大きな瞳。

きれいなそれを、まるで吸い込まれるように見つめながら、


「……他の誰かじゃなくて、俺のことを見てほしいって、ずっと思ってた」


その世界に映り込んでいたい、と思った。

その笑顔を一番近くで見ていたい、と思った。