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いつの間にか、西日の光は弱まり、雲は大きな影となって空を覆っていて。
屋上で眠っていた俺は、ゆっくりと身を起こした。
楽器の音もすっかり聞こえなくなっているし、部活動に励む生徒たちの声も心なしか少なくなっている。
……そろそろ下校時刻か。
荷物をとりに、美術室に戻ろうと立ち上がったところで、——いきなり、バンッ、と音を立てて扉が開かれた。
いつかを思い出させるかのように。
飛び出すように現れたのは、
「みすみ、くん……っ」
息を切らした上村さんだった。
風になびく髪の間から、俺を見つけて、安心したように頬を緩める。
「……っ、ごめんね」
……太陽はすっかり校舎の向こうに隠れてしまったはずなのに。
涙ぐむ上村さんの目は、今日もきらきらしていた。


