そうして、描くことをやめずにいられた俺だったけれど。
……思うように結果が出せないまま、時間だけが過ぎていった。
夏になり、春に応募したコンクールの結果を知った。
また大賞はとれなかった。
加えて、俺が目で追っていたサッカー部のマネージャーとたまたま廊下ですれ違ったとき、「みくる」と呼ばれていることも知った。
一方的に知っているだけの彼女の存在が、自分の中で少しだけ大きくなった気がして、……不思議な気持ちだった。
2学期になり、再び、手を動かせなくなった。
春野先生には「見たい景色を描けばいい」って言われたけれど、なにも思いつかなかった。
大賞をとる、という思いばかりが先走って、……目の前の自分の作品と、向き合えていないような気がしていた。
頭ではそうわかっているのに、自分の気持ちを思うように制御できなかった。
美術室から逃げ出して、屋上でひとり、ぼんやりと空を見上げながら。
きれいだけど、描くまでもないな……なんて、視界に広がる澄んだ青色に対して、失礼なことを思う。
あともう少し、なにかが足りない——。
そんな、俺が欲した『なにか』を埋めるように、その瞬間は突然訪れた。
遠くから眺めるだけだった『みくる』という名前の女の子が、——大きな音を立てて開いた扉の向こうから、俺と同じ空間に、飛び込んできたんだ。


