春野先生に勧められて、応募するようになったコンクール。
1年の内にも何度か賞を受賞して、表彰もされた。
自分の絵を周りに褒められることが増えて、嬉しくないといったら嘘になる。
だけど同時に、どこか素直に喜べない自分がいた。
大賞作品を目にする度、自分の作品との差を思い知る。
絵を描くことが本当に好きなんだと、感じられる絵だった。
……俺は、なんとなく、描くことが当たり前になっていただけだから。
描くことが好きだ、なんて、はっきりと言えない。
じゃあ、自分はなんのために、こんなことをしているんだろう?
一度そう考えたら、突然、描けなくなった。
筆の動かし方を、忘れてしまった。
美術室に座り、道具を広げて、なにを描けばいいのかとキャンバスを見つめるだけの時間が続いた。
そんなときだった。
「ファイトーッ!」
桜色の絨毯を揺らす心地よい風が、開いた窓から入り込んでくるとともに、——女の子の声が、耳の奥に響いた。
落ちていた自分の気持ちを見抜かれたようで、ドキリとする。
半ば反射的に、外を眺めると。
グラウンドのそばでサッカー部の練習を見守っている、マネージャーの声だったのだとわかった。


