***
「今日も賑やかだね、サッカー部。こんなに寒いのに、すごい」
あれは確か、1年の終わりに差しかかった冬のことだ。
入部したての頃には数名いたはずの他の美術部員たちが、徐々に姿を見せなくなっていた中。
静かな美術室で、俺と同じように毎週作業に取り組んでいるひとりの女子部員が、ぼんやりと言った。
今まで特に気に留めていなかったグラウンドの様子へと、なに気なく視線を移す。
「ん、そーだね」
「こっちが静かだから、余計に元気に見えちゃうのかな。仲良いし、楽しそう」
「窓閉めてても、声、結構聞こえるしね」
「そうそう。マネージャーさんの掛け声聞きながら、練習試合とか見てると、たまに一緒になって、がんばれ、って思っちゃったり。あと、こっちまでがんばろって思っちゃったり、するよね」
「……」
「あれ、……しない?」
「……する、かも?」
「……、わたしだけだったんだね……」
恥ずかしー、と呟く声が聞こえて、俺はくす、と笑った。


