振り返ると、


「サッカー部の、マネージャーさん、ですよね」

「……そうです、けど……」

「……いつも、元気もらってます」


女の子は照れたようにはにかんで。

筆を持つ細い指で、窓の方を示した。


「ここからだと、サッカー部がよく見えて。マネージャーさんの声も、聞こえるんです。真面目に作業しにくる部員仲間が、あんまりいないので……気分が落ちちゃったり、作業に行き詰まったとき、……ファイトーって掛け声に、なんだか助けられるっていうか……」

「……」

「あ、すみませんっ。変なこと言ってますよね、わたし……。一方的に知って、勝手に応援されてる気分になって、恥ずかしいんですけど……。でも、あの、新くんとよく、がんばれるねって話してて。……たまたま会えたので、ありがとうございます、って言いたくて……」


鈴を転がすような彼女の声が、わたしの体にすう、と入ってくる。


「マネージャーさんも、がんばってください。……わたし、ここから密かに応援してます」


マネージャーの仕事を、という意味で言ってくれたのだとわかっていたけれど、その言葉は、今のわたしに大きな勇気を与えてくれた。


「……ありがとう、ございます」


動悸を落ち着かせるように、お腹に力を込める。


「がんばります」


女の子に見送られる形で、わたしは駆け出した。

三澄くんに、会うために。