「そうなのか?」

「はい。……なので、もう遅れることもないと思います」


心残りを断ち切るように、さっぱりと声に出す。


三澄くんが、描けないって言ったんだから。

仕方ないよね。

向いてないからもういいや、って思っちゃう気持ち、……わからないわけじゃない。

三澄くんなら、きっと別の方法で絵と向き合えるはず。

だから、……わたしが悔しくなる必要なんて、これっぽっちも、ないんだ。


ただ……。
完成した絵を見るの、楽しみにしてたから。

残念、だけど……。


せっかく落ち着いた気持ちが、再び込み上げそうになって——。


カシャンッ、とフェンスの揺れる音に、意識が引き戻された。

見れば、勢いよく跳ね返ったサッカーボールが地面に弾み、校舎のほうへと転がっていくところだった。


「すみませーーーん」


ボールが飛んできた方から、1年生の部員の声が追いかけてくる。

わたしは軽く手を振って応えると、コロコロと進み続けるボールの後を追いかけた。