「……昨日」
わたしが切り出す前に、先に三澄くんの口元が動いた。
目を見て話す勇気はなくて、床の継ぎ目を見つめたまま、わたしは続きを待った。
「あの人と、話はできた?」
綾人とのことを聞かれたのだとわかり、小さく頷く。
「……、よかったね」
昨日も言われた、同じセリフ。
寄り添うような言葉のはずなのに、まるで突き放すような調子を含んでいる。
それが悲しくて、わたしはきゅっと唇を噛んだ。
「……あんなことして、ごめん」
「……」
「全部、忘れてくれていいから」
慎重に、ゆっくりと吐き出された言葉たち。
けれど三澄くんの選んだ言葉は、わたしの胸を深く突き刺した。
……そんなの、無理だよ。
忘れられるわけない。
だって、……望んだ形じゃ、なかったけど……。
……好きなひととの、キス、だったんだから……。


