「……今日、金曜だよ」

「……う、うん」

「部活なんじゃないの」

「……そう、なんだけど。でも……。三澄くんと、話しておきたくて」


震えるわたしの声は、尻すぼみに消えていく。


漠然とした、焦るような思いだけを頼りに、ここへやってきてしまった。

どう切り出すべきか、……ちゃんと考えておくんだった。


続かないわたしの言葉に、三澄くんは、ゆっくりと歩み寄ってきて。

入り口に立ち尽くしたままのわたしの横を通り過ぎ、扉を閉めて、なにも言わずに準備室の中へと足を進めた。


そのまま開いた窓に近づくと、手を伸ばし、キュルキュル、と窮屈な音を立てながら閉めていく。

外から入り込んでくる風が止み、隔離されたように静まった室内の空気が、重さを増した気がした。


ドサ、と三澄くんが荷物を置くさほど大きくもない音に、わたしの心臓がぴくりと跳ねる。