「お前、……三澄のこと、好きだろ」
「……」
綾人は半分だけ顔をこちらに向けて、迷いなく言った。
わたしはどう答えるべきかを少しだけ迷って、
「……うん」
と小さく言った。
あんなに泣いてしまった後だから、言い逃れはできないと思った。
それに……。
もしかしたら、昨日の時点で。
三澄くんに好きな人がいると知ったわたしの反応で、綾人はわたしよりもはやく、この気持ちに気づいていたのかもしれない。
わたしを掴んでいた手を、綾人がそっとほどいた。
「……やっぱりな。なんだよ、昨日は否定しておいて」
「それは……。だって、付き合ってるわけじゃないもん」
「三澄の好きなやつは?」
「誰かは知らない。……でも、わたしじゃないよ。噂は、間違ってるの」
自分で言いながら、自分で切なくなってくる。


