怒っているような、傷ついているような、曖昧な表情。
そんな風に、三澄くんの整った顔が、くしゃりと歪んで——。
「好きなのやめるの、——全然簡単じゃない」
はじめて見る三澄くんの表情から、わたしは、目が離せなかった。
三澄くんの左手が、わたしの頬に添えられて。
髪の中へと差し込まれる、細く長い指。
テーピングの感触が、こそばゆい。
「上村さん、こっち見て」
ほとんど囁くような形で、三澄くんはその言葉を告げた。
……見てるよ。
そう応えることもできず、すっかり耳に馴染んでしまったその言葉に、……わたしは、必死に三澄くんを見つめ返した。
なにかを予感したように、胸が早鐘を打っている。
気づけば、お互いの吐息が触れ合う距離まで近づいていた。
言われた通りに、三澄くんの瞳を捉えてなきゃ、いけないのに……。
視界いっぱいに映った整った顔に、……わたしはとうとう、まぶたを閉じてしまった。
「はやく忘れて。……俺のこと、見て」


