「——同じ人を好きになるのも、簡単だったりするの?」
すう、と目を細めて。
なにかをじっと抑え込むような声色で、三澄くんがわたしに問いかけた。
「……なんで」
そんなこと聞くの?
その続きは、三澄くんがさらにわたしとの距離を縮めたせいで、息とともに呑み込んでしまった。
頭上で扉についていた三澄くんの手が、わたしの顔の横に移動して、……まるで三澄くんと扉との間に、閉じ込められるような形になる。
三澄くんの顔が、そっと近づいて。
一歩後ろへと下がったわたしの肩が、とん、と扉にぶつかった。
「……上村さんは、嘘つきだね」
唐突に降ってきた非難の言葉に、簡単に傷ついてしまう。
三澄くんの言葉というだけで、こころがいともたやすく、揺さぶられる。


