わたしは、扉に駆け寄った。
鍵を開けて、外を覗き込む形で顔を出すと、綾人が「おう」と軽く手を上げた。
「どうしたの。……まだ帰ってなかったの?」
今日は、サッカー部は休みのはずなのに。
綾人はなにやら言いづらそうに、人差し指で、鼻の下をこすった。
「お前に、話があるんだけど」
「話?」
「……可奈から、お前のこと聞いた」
「え……」
「今日、一緒に帰らねえ? そっちの用が終わるまで、待ってるから」
「……えと」
突然のことに、答えを迷ってしまった。
煮え切らないわたしに、
「遅くなってもいい」
綾人が、そう強く付け足して——。


