「みくる……」
さやちんの心配そうな声が、わたしの思考を引き戻した。
気づかぬうちにうるうるとしていた視界に、ハッとする。
……いけない。
今、また泣きそうになっちゃった。
わたしは、ぱちぱちと瞬いて誤魔化すと、ふにゃりと笑ってみせた。
綾人と可奈ちゃんとは違うクラスだけど、今日は、どうしても部活で顔を合わせなきゃいけない。
考えるだけで、気が重いけれど。
……上手に、笑えるようにしておかないと。
上履きを取り出していたさやちんは、たまらない、という様子で床に放り投げる。
乱暴に履き替えて、わたしにぎゅっと抱きついてきた。
「ほら、よしよしぃ〜っ」
まるで、赤ちゃんをあやすかのように。
わしゃわしゃと頭を撫でられて、わたしまでたまらない気持ちになってしまった。


