「……もっと教えてよ」


落とされた、囁きは。

まるで誘惑するかのような、とろりとした甘さを含んでいた。


「他に、……どんなことしたら、上村さんはドキドキするの」

「っえ……?」


そんなこと知って、どうするの。

これも、絵となにか関係があるの?


困り果てて泣きそうになるわたしを、余裕の表情で見つめてくる三澄くん。

ソファの上に座ったまま、じり……、と後ろへ移動するけれど、ふたりの距離はちっとも遠ざからなかった。


「なんで逃げるの」

「な、なんで逃げちゃだめなの」

「観察中、だから」


やっぱり!

わたしは心の中で、悲鳴のような声を上げた。


「大人しくしてよーね」

「む、無理だよ……っ」


今はキャンバスもないし、絵の具だってないんだから……!

観察する必要、ないと思う!