こころが揺れるの、とめられない



「どの指が痛む?」

「……上村さん。大げさ」

「でも……だって。筆を持つときに痛んだら、困るでしょ?」


そりゃ、時間が経てば治るかもしれなくても。
なんともないかもしれなくても。

……わたしのせいで、万が一のことがあったらと思うと。

怖くて、不安で、いてもたってもいられないよ。


ぎゅっと眉間を寄せる。


——正直に答えて。

そんな気持ちを込めて見ると、三澄くんの大きな瞳が、戸惑うように揺れた気がして——。


「……、小指」


軽く曲げ伸ばしした指へ視線を落とし、三澄くんが小さな声で答えた。


「小指ね」


わたしはさっそく、並ぶ形でソファに腰を下ろした。

ハサミでテープの幅と長さを調整してから、赤みの引いてきた三澄くんの左手に、慎重に触れる。


「テーピングなら、慣れてるから。任せて」


手の甲側の指の付け根から、指先を通り……手のひら側の付け根まで、と、丁寧に貼っていく。

その上からさらに重ねて、くるくると巻いた。


「伊達に運動部のマネージャーやってないんだからね」


されるがままの三澄くんの長い指を保護して、わたしは、最後にチョキン、とテープを切った。


「……はい。できた」


これで、ひと安心。