「っあ、ご、ごめん……!」
たった今。
三澄くんの手を掴んだままだったことを、思い出した。
ぱっと手を離す。
わたしは熱が顔に集中してくるのを誤魔化すように、キョロキョロと辺りを見回した。
「とりあえず、そこ座って……っ」
「……ん」
保健委員でもないわたしの指示通りに、三澄くんはソファに腰を下ろした。
……勢いで連れてきてしまったけれど。
結局わたしにできることは、なにもないのかもしれない。
あとは五十嵐先生を待つだけ。
それなら、わたしはもう必要ない。
頭ではそうわかっているけど、妙な責任感から、足を動かすことができない。
僅かな消毒液の匂いに混じって、沈黙が漂う。
……気まずい……。
おかしいな。
言葉を交わさない時間も、いつもなら気にならないのに。
いる場所が違うだけで、こんなにも空気が変わるもの?
居心地の悪さから、視線をあちこちへと彷徨わせる。
ふと、丸テーブルの上に置きっぱなしにされたテーピングテープが、わたしの目に入った。
——そうだっ。
まるで獲物を見つけたように飛びついて、近くのペンたてにあったハサミと一緒にひっ掴む。
わたしはやる気満々に、三澄くんの元に近づいた。


