どうしようかと迷っていると、三澄くんが「上村さん」とわたしを呼んだ。
「俺は本当に、へーきだから」
「で、でも……」
このまま放っておいて、痛むようになっちゃったら……。
わたしの不安と焦りが、顔に出てしまっていたのか、
「ちょっと、ふたりとも。なにも追い返そうってわけじゃないんだから」
五十嵐先生が、困ったように眉を下げた。
「入って待っててちょうだい」
扉をさらに大きく開いて、わたしたちを中へと促す。
「すぐに戻ってくるから」と様になるウインクを残して、パタパタと小走りで去って行った。
そのまま開け放たれた入り口は、——カタン、と、扉の重みで、勝手に閉まる。
途端に静けさに包まれて、自分の呼吸音を、やけに大きく感じた。
ぽつんとふたりして白い部屋の真ん中に立ち尽くしていると、……わたしの手の中で、三澄くんの指が、微かに動いた。
