「あの、ありがとう……」
細い声で告げると、わたしを安心させるような微笑みが返ってきた。
しん、と静まり返っている体育館。
みんなも、なにが起きたのか頭が追いついていないようだった。
「みくるっ、大丈夫!?」
さやちんが、血相を抱えて駆け寄ってくる。
わたしは、何度も頷いた。
わたしはぜんぜん、だいじょうぶ。
びっくりはしたけど、痛いところもない。
だって、三澄くんが、庇ってくれたから——。
「……三澄くん?」
わたしは、思わず青ざめた。
三澄くんの左手が、じんわり赤くなっているのを、見つけてしまったから。
「……手、痛い?」
「別になんともないよ」
「うそだ」
だって、床に落ちたボールは、重たい音がした。
三澄くんの手に跳ね返ったのだとしたら、きっと、それなりの勢いでぶつかったはず。
体の後ろに隠そうとする三澄くんの左手を、逃がさないように、パシッと掴む。
そこで、わたしははたと固まった。


