ダンッ——! と。
床にボールが跳ねる大きな音に、わたしはびくりと肩を揺らす。
一体なにが起こったのか、わけがわからなかった。
でも、いつまで経っても、覚悟したはずの衝撃は、わたしを襲ってはこなかった。
「っ、危な……」
頭上から落ちてきた呟き。
ホッと脱力したような吐息。
それらに耳元をくすぐられ、……わたしはようやく、気がついた。
後頭部に回された手の感触と、すっぽりとわたしを包み込んでくれている、温もりに。
恐る恐る目を開けると、整ったきれいな顔がすぐ近くにあって。
至近距離で交わる瞳に、驚きによるドキドキが、……ときめきによるものへと、変化した。
動けなかったわたしをボールから庇ってくれたのは、三澄くんだった。
「……へーき?」
「……う、ん……」
ぎこちなく頷くと、三澄くんの手がわたしの髪を滑るように、肩へと移動して。
お互いの体が、離れる。


