いつも通りのノリ。
いつも通りのおふざけ。
好きだった人、と意識をすると未だに悲しくなるものの、きちんと『友達』を維持できるくらいに、もうすっかり、わたしの心は慣れていた。
転ぶなよー、なんてからかいの言葉を背に受けながら、綾人たちから視線を引き剥がして。
気を取り直して入り口へと急ごうとすると、今度は、——まさかまさかの、三澄くんが目の前にいた。
ぱちりと視線が交わって、つい静止する。
誰かが授業前に遊んでいるのか、ボールが床を打つ音が、体育館の中に、大きく響いていた。
……そういえば。
三澄くんは、綾人と可奈ちゃんと隣のクラスだったっけ。
放課後以外、ほとんど言葉を交わしたことのないわたしたち。
……挨拶するべき?
でも……なんて?
……おつかれ?
それって別に、この状況でもヘンじゃない、かな?
だって、なにもなくこのまますれ違うっていうのは、なんだかものすごく、寂しい——。
短い時間の中で、目まぐるしく回る思考。
「みくる、はやくー」
さやちんの声が、わたしを呼ぶ。
それをどこか遠くで聞きながら、うん、と届くはずのない、小さな返事をした。


